「宇宙でカレーが食べられている」——そんな話を耳にして、意外に思う人もいるかもしれません。
けれど、宇宙飛行士のメニューにおいて、カレーは長年にわたり定番の一品。
なぜ数ある料理の中で、カレーが宇宙で選ばれ続けているのでしょうか?
その背景には、宇宙空間という特殊な環境で求められる“食の条件”と、カレーが持つポテンシャルの見事な一致があります。
ここでは、カレーが宇宙食に適している理由を、3つの視点から紐解いてみましょう。
1. 味覚の変化に負けない「スパイスの力」
宇宙では、無重力の影響で体内の体液が上半身に移動し、まるで鼻づまりのような状態になることがあります。
これにより、味覚や嗅覚が鈍くなり、「何を食べても味がしない」と感じることもあるそうです。
そこで頼りになるのが、香りと刺激が特徴のカレー。
クミンやターメリック、コリアンダーといったスパイスの風味は、弱まった味覚でもしっかりと感じられ、食欲をサポートします。
また、少量の辛味がアクセントになるため、マンネリ化しやすい宇宙での食生活にも変化を与えてくれるのです。
2. 高い保存性と取り扱いやすさ
宇宙食には、長期間の保存が可能であり、かつ衛生的・安全であることが求められます。
レトルトやフリーズドライ加工が施されたカレーは、その条件をしっかりクリアしています。
特にレトルトカレーは常温で数年の保存が可能で、加熱すればすぐに食べられるため、手間をかけずに栄養補給ができます。
また、内容物が液体状でまとまりやすく、無重力下でも食べやすい点も魅力。
NASAやJAXAが宇宙食として採用する理由の一つには、こうした「扱いやすさ」も含まれているのです。
3. 栄養設計が柔軟にできる万能メニュー
宇宙では、限られた食事の中で必要な栄養素をしっかり摂る必要があります。
カレーはその点でも優秀。具材やルウの組み合わせを変えることで、エネルギー量・たんぱく質・ビタミン・ミネラルといった栄養バランスの調整がしやすいのです。
例えば、牛肉や大豆ミートを入れてたんぱく質を補い、にんじんやほうれん草でビタミンを加える、といったカスタマイズが可能。
カレーは「一皿で完結する食事」としても優れており、食の限られた宇宙空間では理想的な構成といえます。
宇宙でも“ほっとできる味”を
そしてもうひとつ、見逃せないのが「心の栄養」。
異国の地で生活する人が母国の味に癒されるように、宇宙飛行士にとっても、慣れ親しんだカレーの味は“地球とのつながり”を思い出させてくれる貴重な存在です。
まとめ
スパイスの強さ、保存性の高さ、栄養の柔軟性、そしてどこか懐かしさを感じさせる味——
カレーは、宇宙という非日常の環境においても、食の安心と楽しみを提供してくれる存在です。
もし次にレトルトカレーを手に取ることがあれば、ほんの少し宇宙の食卓を思い浮かべてみるのも面白いかもしれません。
