「カレーライス」と「ライスカレー」──呼び方に秘められた物語

明治生まれの「ライスカレー」、昭和に広まった「カレーライス」

「ライスカレー」という呼び方は、明治時代に日本へ西洋料理としてカレーが伝わった際のもの。英語の“rice and curry”を日本語風にした名称で、当時は高級洋食の一つとして扱われていました。実際、当時のレストランや洋食屋の看板にも「ライスカレー」の表記が見られます。

その後、昭和に入り、特に戦後になると、カレーは家庭料理として広く普及していきます。ご飯にカレーをかける料理が「カレーライス」と呼ばれるようになり、この名前が一般に定着していきました。

1970年代には学校給食やレトルト食品の登場が後押しとなり、「カレーライス」が全国的に主流となります。それに伴い、「ライスカレー」は徐々に聞かれなくなりましたが、懐かしい響きを覚える方も多いのではないでしょうか。

地域によって異なる呼び方の記憶

言葉の定着には地域差もあります。たとえば関西では、今でも「ライスカレー」という表現を使う人が少なくありません。関東ではメディアの影響もあり「カレーライス」が早く広まりましたが、関西では古い呼び名が残りやすかったようです。

筆者も大阪の喫茶店で「ライスカレーあります」と書かれたメニューを見かけたことがあります。見た目はごく普通のカレーライスでしたが、その呼び名にどこかクラシックな味わいを感じ、懐かしい気持ちになったのを覚えています。

呼び方が映し出す記憶と時代

現在では「カレーライス」が圧倒的に一般的ですが、昭和レトロを意識したカフェや昔ながらの喫茶店、あるいは年配の方の間では「ライスカレー」という呼び方も健在です。たかが呼び名、されど呼び名。ひとつの言葉が、時代や文化、人々の記憶を映し出すこともあるのです。

次にカレーを食べるときは、ぜひその呼び方にも意識を向けてみてください。
何気ない一皿が、少し特別に感じられるかもしれませんよ。

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清水しみず年齢:42歳 職業:出張多めの会社員 好きなカレー:マトンのスパイスカレー
仕事で全国を飛び回る日々ですが、どこに行ってもカレーは欠かせません。特にマトンのスパイスカレーの旨みにハマり、旅先でも探し求めています。家でも職場でも旅先でも使える、カレーの面白ネタをお届けします!